天つ神、地祇(国つ神)は、どう違うか? 4

神が人と結ばれることで、

天つ神を生み出す話は、他にもいろいろあります。

比較的有名なのが、奈良の三輪山に残るいくつかの伝説です。
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世界大百科事典 第2版の解説
みわやまでんせつ【三輪山伝説】
《古事記》《日本書紀》崇神天皇の条にみえる伝説。

《古事記》によると,陶津耳(すえつみみ)命の娘活玉依毘売(いくたまよりびめ)には

夜な夜な通う男があってついに身ごもる。

父母が怪しんで男の正体をつきとめるために,

糸巻きに巻いた糸を針に通して男の衣の裾に刺すように娘に教えた。

翌朝見ると糸は戸のかぎ穴から抜け出ており,

糸巻きには3巻きだけ残っていた。

そこで糸をたよりに訪ねて行くと美和(みわ)山の神の社にたどりついた。
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(樋口 清之『逆・日本史』4 より)
「五十鈴媛」の伝説
神武天皇の皇后・五十鈴媛(いすずひめ)は、

三輪山の大物主神の子どもであると『古事記』は伝えている。

そして、この神の子・五十鈴媛が生まれる時のエピソードは、たいへん興味深い。
五十鈴暖の母は、勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)といったが、

この姫があまりに美しかったため、

三輪山(奈良県桜井市)の神・大物主神は心を奪われた。

そこで、その姫のところへ招婿婚の伝統に従って、

俗な表現をすれば、夜這いをかけることにしたのだが、

その方法が実に変わっていた。

すなわち、丹塗矢(赤く塗った矢)に変身して、

姫の家へ行き、姫が厠に入っている時に下から飛び出して、

姫の陰を突いたというのである。
驚いた姫が、その矢を拾って家に持ち帰り床の上に置いたところ、

たちまち矢は美男子に変身し、

この二人は結婚することになるのだが、

そのとき生まれたのが五十鈴媛だった。

そこで、『古事記』はご丁寧にも五十鈴媛の元の名を

〝富登多多良伊須須岐比売命〟

(「陰を突かれ、驚いて生まれた姫」の意)

と記しているのである。
丹塗矢に神が変身するという話は、

『山城国風土記』にもあり、この話と併せて考えると、

このエピソードの真の意味が分かってくる。
玉依日賣(たまよりひめ)という女性が、

京都の賀茂川で川遊びをしていた時に、

丹塗矢が上流から流れてきた。

この矢を拾って帰り、枕元に差して寝たところ、

玉依日賣は妊娠し、男子を生んだという。
どうやら、この話の丹塗矢も神の化身で、

玉依日賣は神の子を生んだことになる。

そして、この二つの話を総合して考えてみると、

丹塗矢伝説の元の形はもっと単純で、

丹塗矢が陰部にささっただけで子どもが

生まれてしまうというものではなかっただろうか。

つまり、神は矢の形に変身して、

人間と交わると考えられていたのである。
だから、五十鈴媛の話だと、

媛の母が矢を拾って云々という話は付け足しであり、

また玉依日賣の場合も、元の話では、

賀茂川で矢を拾ったのではなく、

矢が刺さったことになっており、

それが後に改変されたのである。
神話の中には、陰に先端の尖った物が刺さるという話が多い。

ほかに例を挙げれば、素箋鳴尊が高天原で乱暴を働いたとき、

機織女が驚いた拍子に梭(機織りに使う道具)が

陰に刺さって死んだという話がある。
この話も、本来は神と人間の結婚伝説だったものが、

いつしか死の物語に変化し、さらには、

素箋鳴の話の一部に採り入れられたのではないかと想像される。

この機織女のエピソードの元の姿が

果たしていかなるものであったかは分からない。

だが、古代には、このような神と人間の結婚の物語は

無数にあったことだけは、間違いない。
古代の人々は、性器を生命を生みだす神聖なものと考えていた。

「陰部」(ほと)という女性性器の呼び方も、

それを示している。もともと「ほ」は火、日を意味することばで、

「と」とは場所の意味だから、

「ほと」とは神聖な霊の宿るところという意味である。

だから、しいて漢字を充てるならば、

「秀所」、「穂所」ということになるだろう。
また、伊邪那美命は自分の性器を「め」(芽)と呼んでいる。

これも、植物の芽になぞらえて、

新しい生命が誕生する場所という意味を持たせたものである。
つまり、裸になり、性器を露出させるという行為も、

体の神聖な場所に秘められた力によって邪気を追い払う、

といった意味合いが強く、古代人にとっては、

少しも卑猥なことではなかったのである。

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これらを踏まえて、私が言いたい事は、

このようにして神が人と交わり最初から神として産まれた神が天つ神、

純然たる人が良い生き方をして肉体を失った時、

上の次元に上って(3次元から4次元以上に)神になった神を

国つ神と言うのだということです。